Masuk「陸実っ。お前また人の話を聞いてなかったなーっ?そこは右回転ー」 「へっ!?あれっ!?おっかしいなっ。師匠、今の所もう一回っ!」 「次間違ったら、姫ちゃん特製クッキー没収なー」 「マジでっ!?」 「じゃあ、陸実くんが次間違えたら、大地お兄ちゃんの報酬も没収ねー」 「陸実。死ぬ気でやれ」 「う、うすっ」「おい、こら。海里。寝てんな。今二番の歌詞歌ってたぞ」 「………ネテマセン…、ボク、寝てナンカ、いません…」 「いや、寝てるだろ」 「……ネテマセン。透馬兄、ボク、ネテナイ…ヨ」 「…駄目だ。姫ー。海里がぶっ壊れたぞー」 「え?大変っ。じゃあ、透馬お兄ちゃんにあげるはずだった今日のおやつのシフォンケーキを海里くんの口に」 「起きろ、海里。今すぐ起きなければ命は無いと思え」 「ヒィッ!?」「ワン、ツー、スリー。ワン、ツー、空良。踏み出しが遅い。もう少し早く」 「…………解りました。奏輔様」 「ワン、ツー、スリー…空良、変わってへん。もう一度や」 「…………………」 「違う。そうやない。もう一回や」 「……………………」 「奏輔お兄ちゃーん。空良くん、酸欠でーす」 「へ?お前、それを早く言わんかいっ!あーっ、倒れるな倒れるなっ!まず座れーっ!」以上。ここ数日のレッスン風景をお届けいたしました。 あの三人に教えるのって本当大変なんだけどねー。 流石お兄ちゃん達と言うか何と言うか。 ちゃーんと勉強もさせつつ、レッスンもしてくれていた。 でもね。いくらなんでも頼み過ぎかなーとは思ってはいるんだよね。でもお金とか受け取ってくれないと思ってはいたの。 だけど、一応ね?一応、お礼と言うかしっかりと仕事として、きちんと契約して給金を支払う手続きをしようと思ってね?お兄ちゃん達を家に呼んで、ご飯を振る舞いながら聞いてみたんだけど。 「金?別にいらねーよ?」 「そうそう。別に困ってへんし。教師やってた手前な」 「副業とかちょっと、だしねー」 「あー、そっかー。そうだよねー。んー…それじゃあこうしよう。お兄ちゃん達に自由な時間をプレゼントしますっ」 「ん?姫ちゃん、自由な時間って?」 「むしろ拘束時間増えてるな」 「まぁまぁ、最後まで話を聞いてよー。透馬お兄ちゃんには七海お姉ちゃんを連れ出して欲しい時、七海お姉ちゃんを何
外島社長はあっさりと退任…と言うか、むしろやっていた事が色々露呈して社長職を外された直ぐ後に逮捕されました。 まぁ、当然と言えば当然だよね。 で、だ。 事務所の立て直しに協力すると言った手前、まずはマネージャーだった彼女、後莉良(うしろりら)さんを暫く私の側付きとして真珠さんと一緒に行動して貰う事にした。 とは言え真珠さんのレベルに追い付いてくれっていうのはかなりの無理があるので、一先ず華菜ちゃんと一緒に勉強して貰う事にした。 勿論、事務所の経営は同時進行しなければならないので、私と一緒に人事体制の見直し。 それから所属タレント達としっかりと連携をとるための面談もした。 後社長が選びそして育て上げたタレントさん達は好印象な人達ばかりだった。 と言うか、基本的に賢い人達ばっかりで、正直うちの子達が浮くくらい…。 因みに、外島社長の息がかかった社員は面談の上、何かやらかしてそうだった人達は皆白鳥へと移らせた。 白鳥はそんなに甘くないので、条件だけで惹かれた人達はまず生き残れない。真っ先に首にしなかっただけ感謝して欲しい。真面目にやればお金稼げるんだから問題はないでしょう? 私優しい。うんうん。 タレントさん達と面談は、勿論ユメとあの三人も例外じゃないのよね。 私は事務所内の社長室で莉良さんと一緒にまずはユメの面談をした。 「では、夢子さんは今まで通りアイドル路線で構いませんか?」 「はいっ」 「私からは以上ですが、白鳥さんは何か聞きたい事はありますか?」 総帥と呼ばれると皆がビビるのでさん付けで呼んでと言ってある。 それは良いとして。 勿論聞きたい事はあるともさ。 「ユメはアイドルからどう進みたいの?」 「アイドルから?」 「そうそう。まぁ所謂その後って奴だよね。アイドルって言ったって、未くんと結婚して子供が出来たりしたら続け辛いと思うよ?」 「その後…考えてなかった…」 「まぁね。勿論アイドルとしてトップを走る、表に出るってのがまず難しい事だとは思うの。でもね?ユメがやりたいことがあるのなら、そっちの方に動いていけるように考えるのが大事だと私は思うのね?」 「んー…」 「今すぐに答えを出す必要はないんだよ?ただ考えといて欲しいなぁって私が思ってるだけで」 「うん…。あのね、王子。これはね?私だけじゃなく多分あのば
戻って来たマネージャーさんと外島社長の二人が席に着き、私もその前に座る。 念の為に真珠さんも横に座って貰う事にした。 こう言う時はちゃんと対等に人数を設けないとね。 数を侮るなかれ。クレームを言いに来たモンスターなお客様だって、店員の方に人数を揃えればどうにかなる対処出来る場合がある。場合だからね?確実ではない。 「美鈴センパ~イ、この問題わかんねーよぉ」 「死ぬ気で頑張れ。さて、お話に移りましょうか。契約書。お持ち頂けました?」 「はい。こちらです」 差し出された契約書を受け取り、その内容を読み込む。 ……成程ー。 悪質だわー。 「…空良くん」 「………………とり先輩。呼んだ?」 「うん。呼んだ。悪いんだけど、私に前見せてくれた契約書。出してくれる?」 「?、………持ってない」 「どうして?私ちゃんと大事にとっておこうね、って言ったよね?」 「うん。言われた。でも持ってない。前の契約書は更新になったって持ってかれた」 「…ふぅん。そっかぁ」 ………ジトリ。 外島社長を睨みつけると、社長は直ぐに視線を逸らした。 「外島社長?更新になったとしても、回収する必要はないのでは?」 「それは、その…」 「そんな、社長。私みたいな小娘に遠慮なんてしないで下さい。ハッキリと仰って頂いて宜しいんですよ?」 言えるものならね? ギラリと私の目が光る。 勿論目は光らせてるけど笑顔は絶やしてないよ? 「…これは、ユメの方の契約書も確認が必要かもしれないね」 「えっ?」 「ちょっとごめんなさい」 言いながらスマホを取りだし素早く操作。 ユメへ電話をかける。 すると、1コールならずに電話は繋がった。 『はいはーいっ!王子っ、呼んだっ!?』 「相変わらず早いね。電話出るの。ごめんね?忙しいのに。ちょっと今ユメ達の事務所に来てるんだけど」 『今行くっ!』 ブツンッ。 「……へ?」 切られた。 しかも今行くって言ってた? ユメ今仕事中なのでは? ズダダダダダッ!! うん。ドアの向こうからすんごい足音がする。 バァンッ。 既に開いているドアに何故そんな音が…? あ、ユメが自分にブレーキをかける為に柱を掴んだ音だったのか。 と、凹んだドアの壁を見て一人納得した。 「王子っ!王子っ!」 ハタハタと振られている
※ このお話は本編である『乙女ゲームのヒロインに転生しました。でも私、男性恐怖症なんですけど…』の三十話から続くお話です。まだ本編をお読みで無い方はまずは本編からお楽しみください。「いやいやいやっ!無理だっつーのっ!!美鈴センパイっ!この量はありえねぇっ!!」 「………………すー………すー………」 「とり先輩が言うなら…やるしかない」 「はい、陸実くん暴れない。海里くんは寝ない。空良くんはまずノート開いてくれるかな?」とある事務所の一室で私は三人を目の前に鞭を奮っていた。 いや、だってね? 私達が卒業して、後輩の三人がまだ在学中の高校。 彼らは芸能人になる為に日々努力を重ね、そしてものの見事に勉強がおろそかになった。 その所為である事が起き、呼び出されたのは私。 私は彼らの保護者ではないんだけど…。 でも心配で心配で…だって、騙されやす過ぎて…。 「美鈴センパイ。何故か答えが7万になったんだけど」 「なんで?ちょっと待って?陸実くん、今国語やってるんだよね?」 「すー…」 「ほら、海里くん。起きて」 「とり先輩。ノート開きました」 「うん。じゃあ早速取りかかってくれる?空良くん」 うん。絶対に心配になるでしょ、これ。 何このカオス。 何でこんな事になった? 私は腕を組んで椅子の背もたれに凭れかかって記憶を捜索し始めた。ママに選択を迫られた時、私は当然、誰も選べなかった。 いやだってさ?男性が怖いって言ってるじゃない? ずーっと言ってるよね? 選べる訳ないよね? でも、ママが言うにはそれが危険だって言う。 じゃあどうしたら良いの? って思ってた時に、陸実くんから連絡が来た。 『デビューが決まったんだけど、事務所の人が話している日本語が理解出来ない』と。 書いている意味をこっちが理解するのには、ちょっと時間がかかり過ぎたので、私は彼らに会いに行く事にした。 …んだけど、それに待ったをかけたのはママだった。 「美鈴。いいのね?」 「え?何が?」 「その呼び出しに答えるって事は、年下組に行くって事になるけど」 「えっ?そうなのっ?」 「このタイミングで連絡が来るって事はそうでしょう。今は美鈴…ヒロインにとってルート選択の選択肢画面みたいなものでしょうから」 「選択画面…」 言われて私はもう一度手にあ
「丑而摩さーん。いらっしゃるー?」 「はいはーい」 田舎はチャイムより先にドアを開ける。 それだけ関係が密だと言うのもあるけれど、大抵の家がチャイムが鳴らないなど様々な理由により直接声かけた方が早いからが一番の理由。 丑而摩さんはこんな田舎に珍しくとにかく美形で。 「すみません。お待たせしました~」 奥さんに至っては既に別次元の美人である。 毎度彼女の顔を見たくて、話かけに来る奥さん達は多い。 美人で優しくて、料理上手。いつお家を伺っても笑顔で出迎えてくれて、しかもお土産に料理を分けてくれて。良い人過ぎる。 お蔭で彼女と同じく田舎に嫁いで来た私でも、こうして何の苦もなく住めている。 旦那と縁が切れたとしても、彼女との縁は切りたくない。 だから私も彼女には出来る限り手を貸そうと思っている。 思ってはいるんだけど、今日はちょっと違う案件で、私以外にも他の若い奥さん達が一緒だ。 「ふみみ?皆さん、ご一緒にどうされました~?ご飯食べて行きますか~?」 ニコニコ微笑んで現れたら直ぐにご飯に招待してくれるとか…うぅ、神…。 「それとも、疲れてる?ご飯持って行きます?それか何かお手伝い出来ますか?ひとまず中へ入ってお茶でも」 「あっ、ごめんなさいっ。今日はそうじゃなくて」 「ふみ?」 「丑而摩の旦那さん、帰って来てる?」 「いいえ?まだですが…大地に用ですか?」 「ううん。違うのよ。奥さん。実は私達の旦那も帰って来て無くて」 「今日は確か町内の飲み会でしたよね?今は、えっと九時…まだ飲んでいてもおかしくないですよ?」 「そうなんだけど…」 「…何か不安な事があるんですね。どうぞ話して下さい。協力出来る事はしますよ」 「…今日が町内の飲み会なのは私達も解ってるのよ?ただ、どうにも怪しいと言うか」 「そうそう。いつもなら飲みが苦手な男達はそろそろ帰って来てるのに、今日は誰一人も帰って来ないのよ」 「こう言う時って、いつも理由は決まってて。隣の町内の飲みがかちあってる時なのよね」 「あっちの方が絡んできて、いつも飲み比べになるのよ」 「帰ってくるとお酒臭いわ、愚痴ばっかりだわ、当たり散らすわ、翌朝は二日酔いだわ、で鬱陶しいのよね」 「あっちの町内が絡んでくるんだから仕方ないだろとか旦那達は言うけど結局飲み明かしてたら何を言って
「おーい、美鈴ー。メールが来てるぞー」「はーいっ!」大地が私の携帯を持ちながら、手を振っている。私は持っていた鍬を畑の土にぶっ刺し、大地の側へと駆けよった。結果から言って、あの時の私達の作戦は成功した。呪石を発動させて、その呪いを私と大地は受けて意識を失った。意識を失うまでの記憶が全くと言っていいほどに無いので、恐らく発動と同時に意識を失ったんだろうと思う。そんな意識を失いぶっ倒れた私達を発見したママは一瞬死んだものと勘違いして泣き崩れたらしい。けれど、そこに何故か駆けつけてくれた陸実くんが、『あの』陸実くんが私達の心臓が動いている事に気づいてくれた。その時点で私達に本来かかっていた呪いは制限時間を越えており、死んでいてもおかしくない状態だったのに、心臓が動いていたから呪いの上書きは成功したのだと解る。ママと陸実くんは私達を担ぎ急いで病院へと連れて行ってくれて、私達は無事意識を取り戻した。外傷らしき怪我はなかったから、私達は直ぐ退院をする事が出来た。とは言え、あくまでも私達がしたのは『呪いの上書き』だ。上書きと言う事は、私達が最初にかけられた呪いより、より強力な呪いが私と大地にかけられたと言う事になる。意識を取り戻した私達は、生き長らえたチャンスを得た事を喜ぶよりも、まず上書きされた呪いが何かを調べる事が先決となった。近江くんや愛奈、華菜ちゃんにお兄ちゃん達。金山さんや銀川さん、真珠さん色んな人に協力して貰ってやっと自分達の呪いが何なのかを理解した。私と大地にかけられた呪いは。『寿命の共有』の呪いだった。大地と私の寿命が足して2で割られてると考えて貰っていいと思う。ただここで注意すべきは、私の寿命はあの時で尽きていたと言う事だ。私は前の呪いの所為で寿命がギリギリの所まで来ていた。例えて言うなら、本来は私の寿命が2、大地の寿命を4だったとする。本来ならば合わせて6の時間を二人分で割って、互いに3ずつになる筈だった。だけどこの時の私の寿命はほぼ0に等しかった。大地の寿命が4とするなら、0+4で合計が4のまま。足して2で割られたら、大地の寿命を私が奪ってしまう事になる。私のこの命は全て大地のモノと言う事で、私は大地の寿命を縮めてしまったのだ。私は頑張った。この私だけにかかった呪いならまだしも、大地の寿命を私が吸収する呪いな
それから、襲撃のある8日まで。私は、一日一回はあえて外出し、買い物をするようにした。と言うのも、お兄ちゃん達が、遭遇すると言う形を作りたいと言ったからだ。ゲームにより近づける為なんだって。私としてはお兄ちゃん達だけ危険な目に合わせるつもりは毛頭なかったから、即頷いた。むしろ一日一回で良いのかと聞き返してしまった位だ。けど余計なことをしてもまたお兄ちゃん達の計画を崩すだけだよねとちゃんと思い止まった。買い物をして、華菜ちゃんの家に帰って、華菜ちゃんのご家族の代わりにご飯を作って、パソコンを借りて一日分の仕事をして。これを数日繰り返した。…私、本当にこれでいいのかなぁ…?ちょっと不安に
「…美鈴?」声が聞こえて目を開くと、ママのドアップ。「美鈴。何をぼんやりしているの?早くその本を持って廊下に出てみなさい」そしてまたこのセリフ。私の手にはセーブの本。流石に二度も同じ事があれば、夢でも幻でもないって理解出来る。いや、元々夢の可能性は大分低かったんだけどね。そしてもう一つ、夢を否定するに思い至る理由がある。ここに、いつもママのドアップがあるこの時に戻る理由。こんな事現実的じゃないと思って、つい思考から排除してたんだけど…。でも…もう、そうとしか考えられない。私はやはり『手に持っていた』本を開いた。そこに書いてある文字は、私の文字。『ハートの意味が解らない。
私の視界は真っ暗闇の中。 ふっ。私を舐めないで貰いたいわねっ。 毎度毎度この真っ暗闇を見ていたら、もう分かるもんねっ! ズバリ、私は気を失っているっ!どやぁっ! ……。 ………。 ……………しくしくしく。全くもって威張れたことじゃないのよぅ…しくしくしく。 何で私はまた意識を失ってるのー…。 えっと…、私は何でこうなってるんだっけ?気を失う前は確か…。 確か私は旭と一緒に買い物した帰りに、旭に扮した表門の人に刺されてー…はて? そこから記憶がないと言う事は、私はあそこで気を失ったって事だよね? んで、今現在意識がない、と。そう言う事だよね? でも
※ このお話は本編である『乙女ゲームのヒロインに転生しました。でも私、男性恐怖症なんですけど…』の三十話から続くお話です。まだ本編をお読みで無い方はまずは本編からお楽しみください。「姫。この鎖主体のデザインと、薔薇主体のデザイン、どっちが可愛いと思う?」「んー…、私としては薔薇の方が可愛いと思うんだけどー…、遠目から見てどっちが可愛いと思う?大地お兄ちゃん」「鎖デザインのネックレスと、薔薇デザインのブレスレットー。成程。姫ちゃんが一番可愛いー」「俺もそう思う。姫さんが一番可愛い」「確かに。姫が一番可愛いな」「ちょ、ちょっと三人共っ、デザインの話でしょーっ。私は関係ないでしょーっ。